2019年10月14日月曜日

『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』第Ⅱ部の批判的分析 ~意義・価値理念と事実関係、法則と個性的因果連関、直接に与えられた実在と抽象に関するヴェーバーの誤解

レポート書きました(PDFファイルにまとめたので過去の記事は削除しました)。やっとです。実質10年くらいかかりました・・・

『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』第Ⅱ部の批判的分析
 ~意義・価値理念と事実関係、法則と個性的因果連関、直接に与えられた実在と抽象に関するヴェーバーの誤解

http://miya.aki.gs/miya/miya_report23.pdf

・・・『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』(マックス・ヴェーバー著、富永祐治・立野保男訳、折原浩補訳、岩波書店)第II部(55ページ以降)、因果関係・法則に関するヴェーバーの見解、そして理念型に基づいたヴェーバーの方法論の問題点を指摘するものです。

論点は次の四つです。

(1)「意味」「意義」とは何か:意味・意義(あるいは関心)が先にあって、事実認識がなされるのはなく、事実認識が先にあり、そこから意味・意義が解釈されているのである。ヴェーバーの認識はこの点においてひっくりかえっている。

(2)ヴェーバーは法則と因果関係(因果連関)とを全く別物として扱っている:法則は現実の具体的事象と合致するからこそ法則たりえるのであって、“抽象的”な法則というものはありえない。法則とは、あくまで再現性の非常に高い因果関係のこと、恒常的な随伴・相伴によって検証されないものは因果推論でしかない。

(3)ヴェーバーは、事象を一面的に抽出すればおのずと因果関連が所与としてもたらされているかのように錯覚している。すべての事柄が無数の因果によってつながっているという認識が、それぞれの因果関係の科学的検証以前に前提されてしまっている。

(4)与えられた実在と抽象との取り違え:私たちに直接に与えられているのは、個別的・具体的(ヴェーバーの言葉でいえば「一面的な」)経験・事象・現象であり、「社会的なもの」「農業」「生活」というのはそれらから導かれた“抽象”概念なのである。ヴェーバーはそれら“抽象”概念の方を「直接に与えられた実在」としてしまい、具体的に表れている個別的事象の方を“抽象”と取り違えてしまっているのである。「理念型」が現実と異なるものであるという見解は、この取り違えからもたらされていると言える。そもそもが「理念型」を支える論理の妥当性は、現実と照合することによってしか確かめることができないのである。

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<目次> ※()内はページ
はじめに (2)
Ⅰ.意味・意義・目的論 (6)
1.「意味」とは何か (6)
2.目的論(あるいは意味・意義の問題)は結局、事実関係・因果関係に還元される (8)
Ⅱ.ヴェーバーの「法則」「因果関係」に対する誤解 (11)
1.ヴェーバーは「関心」の問題と「正しさ」の問題とを混同している (11)
2.「法則」も「具体的な因果連関」も因果関係であることは同じ (14)
3.因果関係は個別的関係であるから、分析が一面的にならざるをえないのは当然 (15)
4.「本質的」かどうかと「法則」であるかどうかは全く別の問題 (17)
5.「法則」とは違う“個性的な因果連関”というものの妥当性の根拠は何なのか? (20)
6.文化は価値理念か? (23)
7.事実関係と価値理念との間の因果関連を確かめる術など、どこにもない (24)
8.心理学やら脳科学やらの理論が社会現象のどの側面をどの程度説明できるのかどうかは、あくまで具体的事例分析の積み重ねの「結果」がその妥当を示すだけ (25)
Ⅲ.理念型における認識の転倒 (27)
1.“思考によって構成される”ものが“矛盾のない宇宙”であるといかに確かめることができるのか (27)
2.理念型における論理の妥当性はいかにして確かめられうるのか(1) (28)
3.理念型における論理の妥当性はいかにして確かめられうるのか(2) (30)
4.「直接に与えられた実在」とは何なのか ~「直接に与えられている」ものと、抽象されたものとの取り違えが、まさにヴェーバーの「理念型」 (32)
5.社会科学は「試行錯誤的因果関係構築プロセス」「試行錯誤的な帰納・演繹プロセス」を避けられない (36)


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